カナル型イヤホン前面のベント(穴)について


前面ベントは主にダイナミック型のイヤホンで設けられている。
例えばFidelio S2では振動板より前に3つのベント(穴)があり、
Philips公式では「プレッシャー均一化チャネル」と称されている。
以下はカナル型イヤホンの前面ベント(穴)を塞ぐと特性はどう変わるか、ということについて。
測定結果を見る場合、実際にイヤホンを耳に装着する場合共に注意が必要なポイント。
■前面ベント閉塞による周波数特性変化
・Fidelio S2 の例
ハウジング前面の穴を布テープで1つずつ塞いでいくと、以下のように特性が変わった。


・SE-CL24の例
ステム根元付近にベントがある。これを布テープで塞ぐと以下のようになった。


■前面ベントの効果
定量的な話をするにはデータと私の能力が足りないため、
定性的な話のみになるが一応説明。
・低域特性への影響
十分低い周波数に対しては、振動板より前面のベントは、
イヤーピースと耳の間に隙間ができるのに等しい効果を持つ。
http://monoadc.blog64.fc2.com/blog-entry-119.html
よって、べントがあると低い周波数ほど音圧が低下することになる。
・中高域特性への影響
BA型の場合、イヤーピース-耳間に隙間ができても、中高域特性はほぼ変化しない。
これはBA型イヤホンの出力音響インピーダンスが十分高い
(振動板が外耳道内空気+鼓膜のバネより十分硬い)ため、
隙間があってもなくても振動板の動きにはほとんど影響しないから。
一方、D型イヤホンの振動板の出力音響インピーダンスはそれほど高くないため、
振動板前面のベントにより音響負荷(バネの硬さ)が変わると
振動板の動きも影響を受け共振ピークも変化する。
■測定、実使用と前面ベントの塞がり具合
・私のデータは基本的にはベントを全く塞がないようにして測定したもの。

・一方、ダミーヘッドや人間の実耳に装着した場合、
装着具合によってはベントがいくらか塞がることも考えられる。
・D型の測定データを見る場合、
前面ベントの塞がり具合を考慮する必要があると考えられる。
例えばFidelio S2の低域の盛り(ここでは700Hzに対しての100Hz以下の音圧とする)は、
私のデータでは2個体とも+2dB程度だが、
Innerfidelityでは4個体とも+6dB前後となっている。
http://monoadc.blog64.fc2.com/blog-entry-162.html
http://www.innerfidelity.com/images/PhilipsFidelioS22013.pdf
http://www.innerfidelity.com/images/PhilipsFidelioS2Early2013.pdf
これは、私の測定では前面ベントが全く塞がっていない状態であるのに対し、
ダミーヘッドでの測定ではベントが多少塞がっていたことによる違いである
…かもしれない。
・人それぞれ耳の形や装着具合は異なるため、実際に人が装着した場合に
前面ベントがどの程度塞がるかはケースバイケースで考える必要がある。
上述したようにベントの塞がり具合が変われば特性も変わるため、
同じイヤホンでも人によって全く違った音を聞くことになりうる。
それどころか、左右の耳で全く違う音を聞いてしまっている人もいるだろう。

・前面ベントの塞がり問題はD型イヤホン全般について回ることだが、
特にSE-CL24のようにステム根元に穴が空いている機種では
イヤーピースの傘の部分が穴に被さってしまいやすいので要注意。
・前面のベントは特性を調整するのに役立つものであることは間違いないし、
使って当然のものだと思うが、上記のような問題があるため、個人的には
装着具合によって塞がりかねない位置にはベントを配置しないで欲しいと思う。
測定データの見方も、自分がどのような音を聞いているのか調べるのも難しくなるし、
実使用時にイヤホンを少し触っただけで音が変わると困ってしまうから。
■参考リンク
装着具合による周波数特性変化
http://monoadc.blog64.fc2.com/blog-entry-119.html
補聴器ハンドブック


ベントの効果について載っている。
・Fidelio S2 の例
ハウジング前面の穴を布テープで1つずつ塞いでいくと、以下のように特性が変わった。


・SE-CL24の例
ステム根元付近にベントがある。これを布テープで塞ぐと以下のようになった。


■前面ベントの効果
定量的な話をするにはデータと私の能力が足りないため、
定性的な話のみになるが一応説明。
・低域特性への影響
十分低い周波数に対しては、振動板より前面のベントは、
イヤーピースと耳の間に隙間ができるのに等しい効果を持つ。
http://monoadc.blog64.fc2.com/blog-entry-119.html
よって、べントがあると低い周波数ほど音圧が低下することになる。
・中高域特性への影響
BA型の場合、イヤーピース-耳間に隙間ができても、中高域特性はほぼ変化しない。
これはBA型イヤホンの出力音響インピーダンスが十分高い
(振動板が外耳道内空気+鼓膜のバネより十分硬い)ため、
隙間があってもなくても振動板の動きにはほとんど影響しないから。
一方、D型イヤホンの振動板の出力音響インピーダンスはそれほど高くないため、
振動板前面のベントにより音響負荷(バネの硬さ)が変わると
振動板の動きも影響を受け共振ピークも変化する。
■測定、実使用と前面ベントの塞がり具合
・私のデータは基本的にはベントを全く塞がないようにして測定したもの。

・一方、ダミーヘッドや人間の実耳に装着した場合、
装着具合によってはベントがいくらか塞がることも考えられる。
・D型の測定データを見る場合、
前面ベントの塞がり具合を考慮する必要があると考えられる。
例えばFidelio S2の低域の盛り(ここでは700Hzに対しての100Hz以下の音圧とする)は、
私のデータでは2個体とも+2dB程度だが、
Innerfidelityでは4個体とも+6dB前後となっている。
http://monoadc.blog64.fc2.com/blog-entry-162.html
http://www.innerfidelity.com/images/PhilipsFidelioS22013.pdf
http://www.innerfidelity.com/images/PhilipsFidelioS2Early2013.pdf
これは、私の測定では前面ベントが全く塞がっていない状態であるのに対し、
ダミーヘッドでの測定ではベントが多少塞がっていたことによる違いである
…かもしれない。
・人それぞれ耳の形や装着具合は異なるため、実際に人が装着した場合に
前面ベントがどの程度塞がるかはケースバイケースで考える必要がある。
上述したようにベントの塞がり具合が変われば特性も変わるため、
同じイヤホンでも人によって全く違った音を聞くことになりうる。
それどころか、左右の耳で全く違う音を聞いてしまっている人もいるだろう。

・前面ベントの塞がり問題はD型イヤホン全般について回ることだが、
特にSE-CL24のようにステム根元に穴が空いている機種では
イヤーピースの傘の部分が穴に被さってしまいやすいので要注意。
・前面のベントは特性を調整するのに役立つものであることは間違いないし、
使って当然のものだと思うが、上記のような問題があるため、個人的には
装着具合によって塞がりかねない位置にはベントを配置しないで欲しいと思う。
測定データの見方も、自分がどのような音を聞いているのか調べるのも難しくなるし、
実使用時にイヤホンを少し触っただけで音が変わると困ってしまうから。
■参考リンク
装着具合による周波数特性変化
http://monoadc.blog64.fc2.com/blog-entry-119.html
補聴器ハンドブック
ベントの効果について載っている。
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