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ダンピングファクター(DF)と制動力 その1 概要

スピーカーを鳴らすのに「DF」が100のアンプを使っているところを「DF」が1000のアンプに変えた場合、制動力は最大で何倍になるか。



答えは10倍、ではなくたったの1.009倍。1%も変わらないのである。


本記事ではアンプのダンピングファクター(DF)やスピーカー・ヘッドホンに働く制動力について、主に箇条書きで要点だけまとめた。より詳しく知りたい人は振動学のテキストやTSパラメータの数式などを見てみると良い。

冒頭の問題で、一瞬でも10倍?と思ってしまった人にはぜひ見て欲しいと思う。


■オーディオ界隈における「ダンピングファクター(DF)」の意味

・オーディオ界隈において、DFは一般に
 スピーカーのインピーダンスをアンプの出力インピーダンスで割ったもの
 として定義される。
 例えば、「4Ω負荷時のDFが100」はアンプの出力インピーダンスが0.04Ω、
 「8Ω負荷時のDFが1000」はアンプの出力インピーダンスが0.008Ωという意味。

・では一般にDFの数値がどのような意味を持つとされているのか。
 LUXMANの説明を見てみよう。

Q. ダンピングファクター(DF)とはどのような意味ですか?

A.
ダンピングファクター(DF)の数値はアンプのスピーカーに対する制動力の性能をあらわしています。
具体的には、アンプの出力インピーダンスがスピーカーのインピーダンスに対して、どれだけ小さいかを数値にしたもので、例えば8Ω負荷時のダンピングファクターが100のアンプの出力インピーダンスは8Ω÷100=0.08Ωとなります。ダンピングファクターの値が小さいと、アンプからスピーカーに送り込んだ音楽信号の電流が逆起電圧を発生させ、それによってスピーカーがまた振動してしまうという現象を引き起こしてしまいます。いわゆる「たるんだ低音」という表現がされるとき、この原因による場合があります。ダンピングファクターの優れたアンプでは、充分に出力インピーダンスが小さいため、スピーカーが再度振動することによるだぶつきが発生せず、本来音楽に含まれていない余計な余韻の無いしまった低音を出すことができるわけです。

よくある質問|ラックスマン株式会社 - LUXMAN
ダンピングファクター(DF)とはどのような意味ですか?
 より

 この回答は嘘というわけではないが、肝心なことには全く触れていない。
 それは、DFの数値は定量的に制動力とどう関係しているのか?ということ。
 そして、DFの数値が制動力そのものを表すわけではないことは冒頭で触れた通り。

 実際のところ、「DF」の数値は制動力には直接関係ないのである。

 では真の制動力はどのように決まるのか、ということについて以下で説明する。




■機械的制動と電気的制動

・スピーカーに働く制動力には機械的制動力と電気的制動力がある。
 機械的制動力はスピーカー各部の摩擦などによる力。
 電気的制動力はボイスコイルが動くときの誘導電流により発生する制動力。

・このうち電気的制動力はフレミングの右手の法則で理解できる力であり、
 これがアンプの「DF」、正確には出力インピーダンスによって変わる部分である。

・振動板(ボイスコイル)が動く
 → アンプ-スピーカー回路に誘導起電力(電圧)が発生
 → アンプ-スピーカー回路に回路全体のインピーダンスに反比例する電流が発生
 → 振動板を止める方向に電流に比例するローレンツ力が発生

 つまり、

 電気的制動力は回路全体のインピーダンスに反比例する

 ということである。


・回路全体のインピーダンスはアンプの出力インピーダンス、
 ケーブルやネットワーク、スピーカーユニットのインピーダンスを全て加えたもの。
 アンプの出力インピーダンスや「DF」だけを見て電気的制動力を判断できるものではない。

・さらに、前述したように電気的制動力以外に機械的制動力の寄与もあるため、
 アンプの出力インピーダンスによる制動力全体への影響はより小さくなる。




■制動力と共振の強さQ、TSパラメータ


Q値による減衰振動の違いを示したグラフ。縦軸は変位、横軸は時間(秒)。
固有振動数100Hz、初期変位1、初期速度0とした。



・振動する物体の共振の強さは、一般にQ値で表される。
 至極簡単に言うと、Q値は制動力に反比例し、
 Q値が小さいほど制動が効いていると言える。

参考資料 小野測器 技術レポート 振動の減衰を表す係数
http://www.onosokki.co.jp/HP-WK/c_support/newreport/dampingfactor/index.htm

この資料中では減衰比ζをダンピングファクタと呼んでいるが、
オーディオ界隈における「DF」とは全く別の用語で無関係であるので混同しないこと。



・スピーカーの特性を表すのに一般的に使われるのが、TSパラメータ。
 http://en.wikipedia.org/wiki/Thiele/Small
 当然、スピーカーのQ値もこのTSパラメータに含まれている。
 以下はTSパラメータのうち、3つのQ値であるQmsQesQtsについてのみ説明する。

Qtsはスピーカーの共振の強さを示す値で、
 全制動力(機械的制動力+電気的制動力)に反比例する。

Qmsは機械的共振の強さを表し、機械的制動力に反比例する。
 電気的制動が一切ない条件でスピーカーを使用すると、Qts=Qmsとなる。

Qesは電気的共振の強さを表し、電気的制動力に反比例する。
 仮に機械的制動が一切なく、スピーカー以外の回路の抵抗が0の条件で
 スピーカーを使用できたとすると、Qts=Qesとなる。
 前述したように電気的制動力は回路全体のインピーダンスに反比例するため、

 Qesは回路全体のインピーダンスに比例する

 これは既に述べた電気的制動力と回路全体のインピーダンスの関係を
 言い換えただけなのであるが。




■いわゆる「DF」と真の制動力の違い

一通り説明したところで、冒頭の問題に戻ろう。

問題
スピーカーを鳴らすのに「DF」が100のアンプを使っているところを「DF」が1000のアンプに変えた場合、制動力は最大で何倍になるか。


解答
「DF」が100のアンプというのは、出力インピーダンスがスピーカーの1/100ということである。
よって、スピーカーのインピーダンスが1であるとするとアンプの出力インピーダンスは0.01、回路全体のインピーダンスは1.01となる。

「DF」が1000のアンプでは出力インピーダンスはスピーカーの1/1000であるから0.001、このとき回路全体のインピーダンスは1.001となる。

電気的制動力は回路全体のインピーダンスに反比例するから、アンプの出力インピーダンスが0(「DF」が∞で回路全体のインピーダンスが1)のときの電気的制動力を1とすると、「DF」が100のときの電気的制動力は1/1.01、「DF」が1000のときの電気的制動力は1/1.001となる。

よって、答えは (1/1.001)÷(1/1.01) = 1.01/1.001 ≒ 1.009(倍) となる。

ただし、これは機械的制動力やスピーカーケーブルの抵抗が無視できるほど小さいとしたときの数字であり、これらを考慮すると制動力の違いは1.009倍よりさらに小さくなる。問題文に「最大で」と入れてあるのはこのためである。




■今回のまとめと次回の予定

今回はいわゆる「DF」と真の意味での制動力について、概要だけ説明した。いわゆる「DF」の数字を見てスピーカーに働く制動力について語ることがいかにナンセンスなことであるかは明らかであろう。

次回は実際にアンプの出力インピーダンスを変えてスピーカーの減衰振動波形がどのように変わるか測定した結果を紹介する。また、アンプの出力インピーダンスの違いによる制動力およびQへの影響の大きさが、スピーカーとヘッドホンでどのように異なるかも説明する。いわゆる「DF」がいかに実態と乖離した定義であるか、実際に波形を見ることで改めてよく分かると思う。


↓ 続き
DFと制動力 その2 出力インピーダンスによる共振の変化

http://monoadc.blog64.fc2.com/blog-entry-171.html




※2014/3/25 誤記訂正 解答第三段落部分
誤:「DF」が10のときの制動力は1/1.01
正:「DF」が100のときの制動力は1/1.01

※2014/3/30 Q値と振動状態の図追加

| 音質に影響する要因 | 20:25 | comments:2 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

解答の3段落目
「DF」が10のときの制動力は1/1.01
と有りますが、100ではないですか?

測定結果楽しみにしてます。

| | 2014/03/23 00:18 | URL |

ご指摘ありがとうございます。
仰る通り、10は誤記で正しくは100です。先程訂正しました。
なかなか自分では気付かないので本当にありがたいです。

| adc | 2014/03/25 20:39 | URL |















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